日米包括経済協議と日本側の対応その5(貿易摩擦シリーズ)
- 2019/06/13
- 18:47
日米包括経済協議と日本側の対応
・金融サービスその1
日米間の新たなパートナーシップのための枠組みが1995年2月に定められました。日本側は市場開放を通して競争力のある外国製品やサービスなどの販売を拡大させ、投資や国際競争力を増やしていくことで、日米間の経済面での協力を強化するための枠組みを目指していました。
金融サービス分野に関して、競争力のある外国の金融サービス提供者の市場アクセスを改善することや、国際的な金融市場に対して流動的で効率的な金融市場の発展を促進することや、金融活動の規制における透明性と手続き上の保護を行う事などが明記されました。
これにより、外国金融サービスが日本国内において現行業務の拡大や新たな拠点の設置などが行われるようになります。そして、外国金融サービス提供者は国内会社に与えられるのと同等の権利や特典などを得る事が出来るようになりました。
公的年金資産運用についても日米間で確認が行われました。年金資産は安全性と効率性が根本的な要素ですが、運用は運用機関同士の競争や運用の多様化の拡大などによって、より安全で効率の良い運用環境づくりが必要です。
当時の公的年金資金は実際に元本保証が付されているかどうかにかかわらず、元本保証を付しうる運用対象に投資されるべきとされ、法律上元本保証が禁じられている運用対象には投資されるべきではないとの立場に立っていました。
そこで運用形態の多様化により運用効率の向上を図るために投資顧問会社が実質的に参入することを認めることになりました。この際に投資信託とリミテッド・パートナーシップを設けることになります。
リミテッド・パートナーシップとは一般に投資事業有限責任組合と訳されており、ヘッジ・ファンドのように主にオフショア地域に設立されている投資組合などの事を言います。株式会社と比較して設立手続きが簡単な上、税制上のメリットがあります。この組合は、ゼネラルパートナー(無限責任組合員)とリミテッドパートナー(有限責任組合員)によって構成されます。
投資プロジェクトを立ち上げるゼネラルパートナーはその運用について無限責任を負う一方で、リミテッドパートナーは一般投資家として参加しているだけなので、その責任は投資金額の範囲内に限定されます。
上記の運用手法について、投資顧問会社によって運用できる民間金融機関への資産配分を決定し、専門のファンドマネージャーによる特定資産への特化運用が可能になりました。当時の大蔵省はこの新たなスキームが公的年金資金の運用に対して有効な方法になると考えていました。
厚生年金基金については自主運用の認定のための8年要件を3年に短縮することや、自主運用枠を3分の1から段階的に拡大することとしています。また、自主運用部分について運用機関側に課せられている投資運用規制の撤廃が行われました。
投資信託委託業務と投資一任業務の併用では投資信託市場に対するアクセスの改善と競争の促進を目的として、投資一任会社が委託会社としての免許を受けることを条件に、一つの会社で投資信託委託業務と投資一任業務を営むことを認めました。
当時は投資信託商品の販売について商業銀行の証券子会社は投資信託商品を販売することが認められていることや、委託会社は投資信託商品を直接販売することが認められていました。
そこでは投資信託のパフォーマンスに関するデータの時価ベースでの開示を向上させることや、投資家が個々のファンドの運用パフォーマンスについてより長い情報を得られるようにすることなどが求められました。
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