第2回日米規制緩和対話と日本側の対応その15(貿易摩擦シリーズ)
- 2019/09/05
- 06:58
第2回日米規制緩和対話と日本側の対応
・医療用具・医薬品その3
医薬品の臨床試験の実施の基準(GCP:Good Clinical Practice)とは医薬品の開発の最終段階においては、ヒトを対象とした臨床試験(治験)による薬物の臨床的な評価が必要不可欠であり、ここで収集された資料等に基づき医薬品の製造や輸入のための承認申請が行われます。
この治験の実施に当たっては、被験者の人権と安全について十分な配慮がなされることを前提として、治験の科学的な質と成績の信頼性が確保されていることが必須となります。
このような観点から策定された基準が「医薬品の臨床試験の実施の基準(GCP)」であり、1989年
に薬務局長通知による行政指導として最初のGCPが定められました。
その後治験のより一層の適正な実施、更には欧米との間でGCPの国際的調和を図る観点から、GCPの内容を改定するとともに、1996年6月の薬事法改正により、GCPの根拠規定を整備し、治験を依頼する治験依頼者(製薬企業)のみならず、治験を実施する医療機関や治験を担当する者に対して、その遵守を義務付けることとなりました。
新GCPは1998年4月から全面施行されました。以前のGCPに比べた変更点は、被験者となるべき者に対する治験に関する文書による説明と同意の取得や、治験総括医師制度の廃止、治験依頼者の責任範囲の拡大と強化、治験審査委員会の機能の充実、治験責任医師のの責任と業務の明確化、医療機関における治験事務局の強化などが挙げられます。
新GCPは、治験における倫理性、科学性や信頼性の一層の確保を目的としたものであるが、他方で日本では治験者の積極的な治験参加を求めていくための体制や治験実施医療機関内の治験実施体制の整備が不十分であり、この制度の導入により、治験の停滞が生じているとの指摘がありました。
そこで、治験の情報提供について治験薬の商品名を特定しない範囲で治験薬につき治験実施医療機関や治験依頼者が情報提供を行うことを可能とするとともに、国立病院や国立大学病院に対し、被験者の治験参加による時間的拘束、交通費の負担増をはじめとした物心両面における種々の負担に対する金銭の支給を可能とする方針を打ち出しました。
新薬承認審査期間については12カ月に短縮し、革新的な新薬の導入を一層迅速化するため、とりわけ優先的医薬品について承認期間を相当程度短縮するとしています。
優先審査の取扱いを受ける承認申請の判断基準や選定過程の概要については、厚生省通知で既に示されています。円滑で迅速な新薬承認を確保するため、日本側は、すでに承認済の用量に包含される用量に関しては、生物学的同等性データ以外に追加の臨床試験データを要求することなく承認することになりました。
1999年4月1日より、ソフトコンタクトレンズと化学消毒剤の適合性評価に関し、ソフトコンタクトレンズのグルーピング制度を導入し、製造業者はグループ内の1種類のコンタクトレンズを試験することによってグループ内のすべてのブランドについて厚生省の承認を得ることができるようになりました。
流通システムでは、日本側は、サービスの明確化のため、医療用具の製造業者と卸売業者が用いるモデル契約は、業界団体の自主的な取組みであることを認識し、このモデル契約については、公的に認知するものではなく、また強制するものでもありません。
医療政策の検討における透明性を確保するために、外国の医薬品・医療用具製造業者からの要望に応じて、関係審議会や関係検討会における意見表明を日本の製造業者と同等に行う機会や厚生省のあらゆるレベルの職員との意見交換を行う機会が設けられました。
栄養補助食品について、ビタミン、ハーブ、ミネラル等の栄養補助食品市場の自由化の推進のための措置の制度化や実施に向け最大限努力するとしています。また、非有効成分や賦形剤の位置付けや取扱いについて、栄養補助食品における使用の観点から議論されました。その背景として、米国側から日本の栄養補助食品市場を完全自由化することが求められていました。
賦形剤とは錠剤・丸剤などの製剤過程で、主薬の量が少ない場合に一定の大きさや濃度にする目的で添加されるものです。乳糖やデンプンがよく使われます。
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