第3回日米規制緩和対話と日本側の対応その57(貿易摩擦シリーズ)
- 2020/01/20
- 06:47
第3回日米規制緩和と日本側の対応
米国政府によってとられた規制緩和及びその他の措置
・規制緩和・競争政策およびその他措置その9
米国政府は、マサチューセッツ州のミャンマー制裁法に関し、個々の州による法律はこの分野に関する連邦政府の政策と整合的であるべきであるとの立場を確認するとしました。
2000年6月19日、最高裁判所は全員一致で本件州法が違憲であることを確定する判決を下しました。
最高裁判所は、専占を理由として判決を下し、マサチューセッツ州法は連邦のミャンマー制裁法に抵触し、専占されていると判断しました。
米国は、連邦政府と州政府がこの種の案件に関し緊密に調整することが重要であることを確信しているとしています。
米国、マサチューセッツ州ミャンマー制裁法について、1996年6月、マサチューセッツ州はミャンマー関連の商取引を行う企業との州契約を規制する州法を制定しました。
同州法は、州機関の調達において、ミャンマーに主たる事業拠点・本社等を有している企業やミャンマーで商活動、子会社保有等を行っている企業、ミャンマー政府に融資等を行っている企業、ミャンマー政府が主として取引をコントロールしている宝石・木材・石油・ガスとその関連製品の輸入や販売の促進に関わっている企業、ミャンマー政府に対して何らかの産品やサービスを提供している企業からの調達を制限する内容となっています。
具体的には、上記要件を満たす企業リスト(Restricted
purchase list)を作成し、当該リストに掲げられる企業は原則として入札が認められないこととされ、認められる場合にも当該リストに掲載されていない企業に比較して、入札に関し不利益な条件が課されることがあるものとされている。
なお、当該リストに掲載されている企業は、約350社であり、そのうち日系企業は、約50社でした。
マサチューセッツ州は、米国が政府調達協定でコミットしている地方政府機関37州の中に含まれ、
政府調達協定の規律に服することとなるとしました。
同州法は、供給者の資格審査を定める同協定第8条、または落札の基準を定める第13条第4項等に違反する可能性があるとしています。
更に、同州法に基づいて、当該リストに掲載されている企業をそれ以外の企業と差別しており、内国民待遇原則と無差別原則を定める第3条第1項との整合性が問題となりうるとしました。
日本側は、本件州法の政府調達協定との整合性に関して、米国に対して繰り返し懸念を伝える一方、1997年3月には、協定上の情報請求を行われています。
その後も、同州法の協定整合化と情報請求に対する早期回答を再三求めてきましたが、そのいずれに関しても、米国政府の誠実な対応が認められなかったとしています。
本件に関しては、EUも日本側と同様の懸念を有しており、EUと日本側が1997年6月、7月に相次いで米国に対して協議要請を行い、1997年中に3回の協議をEUとの共催という形で実施されました。
その後、米国の国内事情や、マサチューセッツ州議会日程等に配慮し、しばらくの間、米国の前向
きな対応を見守っていたものの、事態の実質的な進展が図られなかったため、1998年9月にEUと共同歩調により、米国に対してパネル設置要請を行い、10 月にはパネルの設置が決定されています。
しかしながら、その後、米国内での合衆国憲法との整合性についての国内裁判手続の中で、マサチューセッツ州法は、効力停止の状態とされたことから、日本側は、1999年2月にEUとともにパネルの検討の停止の手続をとったところ、本件パ
ネルは、紛争解決了解(DSU)第12条第12項の規定が、12か月を超えてパネルが停止された際にはパネル設置の根拠を失う旨を定めていることから、2000 年2月11日に消滅しました。
WTOにおけるパネル手続と併行して、米国国内では、米の民間団体である「全米外国貿易委員会(NFTC)」が、本件州法が合衆国憲法に抵触(憲法が定める連邦の外交特権と外国貿易権限を侵害)するとして1998年4月に連邦地裁に対し提訴を行いました。
これを受けて、1998年11月に連邦地裁は、本件州法の違憲判決を下し、本件州法を無効としました。
マサチューセッツ州は、本判決について控訴するとともに、無効の差し止めを求めていましたが、1999年6月に連邦控訴裁判所は、地裁判決を支持する旨の判決を下しています。
これに対して、マサチューセッツ州は、連邦最高裁判所に上告した結果、2000年6月に、第1審・第2審を支持する形でマサチューセッツ州法を違憲とする判決が下されました。
マサチューセッツ州以外にも、米国内の複数の地方自治体(カリフォルニア州アラメダ郡ほか21 市)において、類似の制裁措置等が制定されており、そのうちの多数の措置に、対象国と取引関係を有する企業からの政府調達を制限する類型が見受けられます。
そのような状況において、上述の連邦最高裁判所における違憲判決は、個々の州の通商関連立法に伴い民間企業が直面する参入障壁の除去につながる意味で評価できるとしています。
また、対外関係に関し連邦法が専占する領域にかかわる州法は違憲であるとした判断は、将来の州立法に対する抑止力になりうると評価できるとしました。
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