第4回日米規制緩和対話と日本側の対応その33(貿易摩擦シリーズ)
- 2020/04/17
- 06:56
第4回日米規制緩和対話と日本側の対応
米国政府による規制緩和及びその他の措置
・規制緩和・競争政策およびその他の措置その3
米国政府は、エクソン・フロリオ条項に関して、就中規制の予見可能性や、完了した投資の法的安定性、デュープロセス確保という観点から、日本政府が有している懸念を認識するとしました。
米国政府は、日本政府との会合や質問に対する書面の回答においてこれらの懸念に応える努力は行ったとし、今後のエクソン・フロリオ条項の運用に当たっては、日本政府の懸念も考慮に入れつつ、WTOル ールとの整合性に配慮することとするとしています。
エクソン・フロリオ条項とは、米国の1988年包括通商・競争力強化法第5021条において、50年国防生産法第721条の修正を行なった条項です。
外国企業による米国企業の合併、買収、経営支配権取得が米国の国家安全保障を損なうと判断された場合、その取引を停止または禁止する権限を大統領に与えています。
調査は、対米外国投資委員会(CFIUS)が担当しており、時限立法である国防生産法とともに、90年10月に失効していたが、91年8月に本条項を国防生産法と切り離して恒久延長とする旨の法案が成立しました。
本条項に関しては、国家安全保障の基準が明確にされていないことや、サンセット規定がないため、投資完了後も条項の主たる実施機関である対米外国投資委員会による強制売却命令の対象となりうるなどの問題点があります。
サンセット規定とは、行政が効率的に行われているかどうかを常に見直すために、あらかじめその事業の打ち切り期限を明示しておき、その時期が来たら自動的に廃止してしまう方式です。
予算や権限は、本来は毎年ゼロから積み上げていくことが望ましいが、現実には過去に一度決められたものはなかなか変更しにくいため、期限が来たら日が沈む(サンセット)ように自動的に廃止し、その施策が効率的に実施されているかを見直すものです。
エクソン・フロリオ条項に関連し、2018年8月に成立した外国投資リスク審査現代化法(FIRRMA)により、審査対象の拡大や、非公開技術情報へのアクセスを可能とする投資等の一部の小規模投資も審査対象化となり、審査期間の延長や、特定取引の事前審査の義務化、審査考慮要素の追加(特別懸念国の関与、サイバーセキュリティへの影響等)等、CFIUSの権限が強化されました。
なお実際の適用は、財務省により実施に伴う規制整備等の準備終了に関する官報公示日から30日、または法律施行日から18か月後のどちらか早い方に設定されています。
本法に基づく手続きの具体的な流れは、一部の投資を対象とした事前届出や、当事者の自発的な申し立てもしくはCFIUSの委員の要請により、CFIUSが調査実施の適否を審査し、必要があれば調査を実施して大統領に報告を行い、大統領は、同報告を受けて、投資案件の停止又は中止の決定を判断します。
これまでも、日本企業が米国企業買収等を行う際、CFIUSにより調査が行われ、当初の計画の修正を迫られたケースがあります。
例えば、 2006年に、東芝による米原子力プラントのウェスチングハウス社の買収に際して、同条項に基づくCFIUSの審査が行われた例があります。
懸念点としてWTO協定には、投資に関する一般的なルールは未だ整備されていないが、サービス貿易に関してはサービス協定が既に存在し、投資を通じたサービス貿易提供も規律しています。
同協定は一定の要件の下で国家安全保障上の例外を認めており、本法そのものはWTO協定違反となるものではないと考えられるが、米国は、同協定に整合的に自国の投資規制措置を運用する必要があるとしています。
日本政府は、従来から外国投資審査の運用における透明性と公平性の問題点を指摘してきたとし、 2015年のCFIUSから議会への外国投資審査に係る報告書によると、2015年中にCFIUSから143件の通知が出され、日本企業が関与したケースが12件あるとされています。
2013年には、ソフトバンク社による米スプリント・ネクステル・コーポレーションへの投資に対して、CFIUSの審査が行われました。
日本政府は、今後とも同法が日本企業の米国への投資に不公正な影響を及ぼすことがないよう、注視が必要であるとしています。
ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
をもとに作成
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